ネットやめろ症候群

サブカル末期メンヘラ芸術家気取りクソスチーマーのポメ野郎

ゲームをクリアしなくても良いと思った日「Diaries of a Spaceport Janitor」

今日はSF港町を歩く清掃人の物語。
Diaries of a Spaceport Janitorをご紹介します。

こちらはアンチ冒険ゲーム。
条件付きになりますが、オススメできるゲームです。

 

ある日、ダンジョンの奥へ進んだ主人公。
呪いにかかり、がしゃどくろに付きまとわれるハメに。
ここから、呪いを解くための大冒険が……

始まったりなんかしない。
ストーリーは展開されるが、大冒険なんか無い。
仕事を片手に呪いを解く手段を探すというだけ。
日常のルーチンにクエストが追加されるだけ。

 主人公Janitor(以下ジャニター)の生活は作業の繰り返しである。

背中に背負った焼却炉のエネルギーが切れるまでゴミを燃やす。
(次の日の朝にお給料になる)

たまに物を拾ったりする。物々交換で少額のお金を得て、そこから頑張って食を得る。拾い食いという選択肢もある。とにかく食べものを得る。腹が満たせないと寝ることができないから。
寝る前に日記を書く。プレイヤー自身がタイピングし、データ記録されていく。書き終えたら眠りにつく。

起きたらお給料を貰って、また仕事の掃除が始まる。

……

人生、生活のルーチンを味わうゲーム。

最近の日本のブラックな世の中により、社会人に特に、大変、オススメしにくい……だが、
この世界で得られるちょっとした「瞬間」が大変味わい深い。

また、独自の世界観とシステムが面白い。
これらの要素をプラスされて、作業ルーチンが魅力的になる。

ジェンダーシフト、7つの信仰、独自の架空言語、多くの住人……

まず特有システムジェンダーシフトについて。
生活しているうちに視界が揺らめき、終いには文字の認識が出来ないほどになってしまう。
主人公が落ち着かない、不調、といった物を示してくる。

自販機にジェンダーシフトという薬のようなものを購入し、服用することで収まる。
主人公の種族が性別が一定でない種族なのか、変化する種族と思われる。(申し訳ないがここは推測である)この社会に馴染む為、何かを抑える為に薬を服用しているのか、等が考えられるが詳細は不明である。単語としては女性を指すものが使われているが、男女の性別とはまた違うジェンダーなのだと思う。

ジェンダーシフトというシステムは開発陣にノンバイナリー*1など、性別への思いを感じる人々が意図的に組み込んだシステムだという。
ソース元:steam掲示板

 

惨めな生活、ポップなグラフィックに反した残酷な描写。

このゲームの特徴でもある。食べるのがやっとな毎日。お金が得られない日もある。拾い食いをして、嘔吐しながら帰る。誰も呼び止めたり助けてくれたりなんて事はない。終いには黒い野郎にカツアゲされ、追い打ちをかけられる事だって日常茶飯事。

はっきり言って苦痛の日々を味わう。正直、初見プレイ時は段々苦痛とストレスを味わった。駄目だと思ったら投げ出しても良い。あくまでこれは現実世界ではなくジャニターの生活なのだから。

でも、SF世界の港町には悪い事もあれば良い事もある。

広大な市場で交渉が上手く言った日なんかあれば、すごく嬉しい。なかなかそんな日が来るのは稀だが、ちょっと奮発した飯を買いたくなる。ウキウキしながら、スリに気をつけながら歩いて帰ろう。

街の中を走る浮遊バスにクラクションを鳴らされる。アレに乗れる日は恐らく来ないが、観光客達が過ぎ去るのをぼんやり眺めるのも、また日常風景である。

同じような街をウロウロしたかと思えば、ふとした時に路地裏を見つけることもある。そこで暮らす住人もいる。

決まった曜日にお祭りがある。不思議なモンスター達が知らない単語で合唱をしている。暖かい穏やかな光が舞っている。主人公とはまるで違う生活、それを遠くで眺める時、また趣を感じてしまう。切ないような、暖かいような、妙な気持ちにさせられる。

人生体験シミュレーター、なんじゃないかと思った。
呪いを解くクエストは、私はまだ達成できてない。でもこの人生を楽しむ瞬間を何度も見れた。苦しい瞬間を何度も味わった。ゲームとしては正しくはないかもしれないが、これもまた、楽しみ方のひとつなんじゃないかと思う。

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初めて見た路地の向こう側。

賛否はあるゲームだが、確かな魅力なアートスタイルと生活。

よかったら味わってみて欲しい。

*1:自分を男女という二項のどちらに該当するとも感じない人々を総称。non-binary